YAMAHAから発売されているオーディオインターフェイス兼HDMIスイッチャー「ZG01」を自分が買ったわけでもないですがレビューしてみます。
最近とある配信者に時々技術協力をしており、その際の雑談でAG03から別のオーディオインターフェイスに買い替えたいとの話が。
ZG01が昨年末、NieR:Automataコラボモデルを出すと宣伝しており、それに買い替えたいけど設定がわからん!とのことで、じゃあ買ったら設定手伝うから買ってきなさいと散財を勧め買わせました。
いざ実際設定にとりかかったところ、なんだこの仕様は…?というのに直面したため、覚え書き程度に書いておこうというのがこの記事です。
機能面は割りとざっくり書くだけですので、細かな設定などで詰まったら自分でユーザーガイドを見てください。
この記事では、困惑した問題点について触れるのがメインです。
外観・本体機能
こちらはフロントパネルの画像。本体外観は非常にスッキリとしています。
オーディオインターフェイスとしては1in(キャノン)、2out(ミニステレオ)、ヘッドホンアウトと、最近流行りの配信特化タイプの構成です。
左側はマイク関係。ミュートボタンとDSPエフェクト三種をボタンで一発で行えるという点は非常に良いと思います。配信においてミュートは大事ですからね。
AG03と同じくGainとスライドフェーダーの2段階での音量調整。Gainつまみで設定した音量に対し、フェーダーで即時アクションを起こせるのは楽です。
このあたりは必要最低限構成ながらもわかりやすい良い構成だと思います。
機器接続
では仮に、必要な構成を接続したとします。
YAMAHAは接続例を3つ提示しており、1つはPCを使わない接続例のため実際は2つの例から自分のやりたい構成に近い方を選ぶ形になるかと思います。
1つめは配信をせずに、VCをしながらゲームをするだけの構成です。
割りとそのまんまな接続です。
ゲーム機から出たHDMIの音声を拾い、VCと合わせてヘッドセットに出力するだけなので、使用する機能も限られます。
2つめは配信をするためにキャプチャデバイスを追加した構成です。
こちらも、接続すればそのまんまだなと思います。
注意点があるとすれば、ヘッドセットにマイクがついている場合、前面のヘッドセットマイクに端子を接続すると、裏面のキャノンは無効化される点です。
その場合は内部で切り替えなどできないため、接続しないというのが解決方法です。
ZG01を購入する層はほとんど2つ目かと思います。2つ目の接続をしたとしましょう。
Windowsでの設定
ではPC内での設定に移ります。
ZG01をPCに接続すると、Windowsには2つの再生デバイスと2つの録音デバイスが追加されます。
再生デバイスは「Speaker」と「Voice」。
「Speaker」はヘッドセットと裏面のスピーカーOUTを指してます。どちらからOUTするかは上面の中央上の切り替えスイッチで切り替え。
「Voise」はVC再生用のチャンネルです。これは違う名前のほうが丁寧ですね。
VC等の再生をこれに指定してあげると、VCの声は別ルートを通って、Speakerと同じ出力がなされます。
録音デバイスは「Voice」と「Streaming」。
こちらの「Voise」は自分の声です。キャノンもしくはヘッドセットからの自分の声がここに入ります。
問題は「Streaming」。こいつが厄介です。ここまで出てきたデバイス、それに加えてHDMIの音声等が全てここに突っ込まれます。
ZG01専用ドライバーソフトにはこのStreamingチャンネルを操作するためのStreaming Output Mixer画面があります。しかし、ここが機能不十分すぎます。
一旦その話は置いておいて、機能の部分を続けて書きます。
Windowsでの設定でやるとしたら、再生デバイス「Speaker」を規定値に。
録音デバイス「Voise」を規定値にすることで、基本的な再生・録音が使用可能になります。
一方でVC、DiscordであればDiscordの設定画面「音声・ビデオ」で、入力デバイスを「Voise(録音)」に、出力デバイスを「Voise(再生)」にすればOKです。
このあたりに突っかかる人は多そうだなと思います。
詳しく解説してる記事も参考に。
音声のコントロール
再びフロントパネルです。
右側、大きなつまみは全体音量のコントロールです。
その左にある①②③のボタンは、HDMIからインプットされた音声に対してEQ等をかけるエフェクトセレクターです。使うとしたらFPSでの足音強調EQなどの設定でしょうか。
大きなつまみの上にある、吹き出しつまみ、こちらが「Voise(再生)」の単独コントロールです。Discordで設定しているでしょうから、Discordからくる声の音量コントロールが可能となります。
ゲームパッドつまみ、こちらがHDMIで接続されたゲームの単独コントロール…かと思いきやなんとデスクトップ音声とHDMI音声の全体コントロールです。
あまりに謎すぎるこのつまみですが、音声ルーティングを見てみましょう。
全体の音声ルーティングなのでわかりにくいですが、このゲームパッドつまみが関係するところだけ追ってみましょう。
まず左側から追うと、いきなりUSB「Speaker」がHDMI2系統の音声にぶち込まれています。(なぜ??)
Windowsの設定で、Speakerは既定値にしましたから、デスクトップ音声はいきなりここでミックスされて、次のステップに行きます。
ゲームエフェクトを通って、二分割された信号は、ゲームパッドつまみと、ZG01のドライバーソフト内にあるStreaming Output Mixerに行き、その後、USB「Streaming」とHDMIパススルーOUTの音声信号に行きます(!?)。
あ????と思った人もいるでしょうが、先に進めます。
フロントパネルで調節できる3つのつまみのうち、PCで使用する際に主となるのは大きなつまみではなく、ゲームパッドつまみになります。
マイク入力された自分の声の返しは大きなつまみで調整することになりますが、一度自分の声の返しの音量を決めてしまったら、以降はゲームパッドつまみしか触らないと思います。Outputの設計が悪すぎますね。
ゲームパッドつまみではなく、マイクの返しのつまみだったらまだ納得できます。
なんでゲームパッドのイラストにしたのか謎です。これは直感的に間違えますね。
しかし、ここまではあくまで「自分で聞く用」の音声ルーティングでの問題点です。
慣れてしまえば問題ないとも言えます。
配信ソフトでの設定
再び例に立ち返ってみましょう。
HDMIをOUTした後にキャプチャデバイスを通って、モニターでパススルーを確認する形になっています。
ここで問題となるのが、「音声はパススルーではない」点です。
先程のルーティングで、HDMI OUTされた音声はStreaming Output Mixerを通っています。
これがどうなるかといいますと、「Streaming(録音デバイス)」と同じ音声がHDMIからOUTされ、キャプチャボード内で音声を拾うことになります。
件の配信者と私が頭を悩ませたのはここです。
OBS上の音声設定が「Streaming」に集約されてしまうのが基本設計となっています。
OBS上の設定として、音声ルーティングを確認しないまま、このような音声ミキサーを組んでいました。
左から、VC(Discord)、自分の声(ZG01)、HDMIゲーム音(キャプチャデバイス)、デスクトップ音声です。
しかしこのまま使用すると、HDMI OUTからキャプチャデバイスが拾った音声はデスクトップ音声を含むStreaming Output Mixerで集約されたものになるため、ゲーム音(キャプチャ)ですべての音が二重で取り込まれることになります。
ではYAMAHAはどのような配信ソフト上での音声ミキシングを想定しているかというと、こうなります。
OBS上の音声ミキサーを使用せず、Streaming Output Mixerですべての音を管理せよ、ということです。
では、Streaming Output Mixerの画面を見てみましょう。
上から3系統のインプットをOUTPUTする設定。
自分の声・VCからの声・HDMIゲーム音(デスクトップ音声「Speaker」を含む)。
これらはミュートにできるため、別途OBS上で取り込みたい我々は、MIC・VOICEは常時ミュートにします。
GAME音のみ、ここでミュートしてしまうとHDMIからの音をどこからも取り出せない状態になるため出力します。
そしてOUT PUTはUSBとHDMIのON/OFF。右側にはMonitor。
別画面で、自分の声のモニターを設定することができるため、ここにMonitorがある意味はよくわかりません。他のものに関しても、そもそも聞こえて当然です。ではなんのためのMonitorなのかといえば、ここでミキシングして音量バランスを整えて、確認するためのMonitorボタンです。
そして、USBとHDMIのOUTのON/OFFですが、ほぼほぼ意味がありません。
USBをONにすることで、「Streaming」チャンネルが使えるようになります。
HDMIをONにすることで、HDMIの音声がパススルーされることになります。
当初のOBSミキシングでは使わないと判断したため、HDMIをONにしました。
すると、HDMIに加えてデスクトップ音声(Speaker)も一緒になってパススルーされます。
キャプチャデバイスからデスクトップ音声を拾ってしまうことになるので、HDMIをOFFにし、USB「Streaming」をOBS上で録音デバイスとして設定し、HDMIの音を拾おうとしました。
結局こちらにもデスクトップ音声が一緒になってしまい、デスクトップでなにか音を流そうものなら、全て乗ってしまうということになってしまいます。
これを解決するために、最終的に機器の接続を以下のようにしました。
ざっくり端折った手書きですが、ZG01にHDMIを入れる前にキャプチャする形です。
こうすることで、デスクトップ音声のないHDMIのみの音声をPCに取り込むことができます。
しかし、こうするとZG01のHDMIセレクター機能が全く持って意味のないものとなってしまいました…。
ZG01の問題点
配信でZG01を使用する上で、問題となるのは要約すると下記2点です。
・HDMI音声はパススルーではない
・Streaming Output Mixerでデスクトップ音声(ZG01 - Speaker)をミュートできない
それ以前に設計上の問題として、HDMI音声にPC音声をなぜミックスしたか、という点です。これによって、更に下記2点の問題が発生します。
・ゲームパッドつまみがデスクトップ音声を含む全体のつまみとして機能する
・デスクトップとHDMI音声が個別に音量調節できない
ZG01はPCを使用しない使用方法も想定しています。
スマートフォンでVCをつけて、家庭用ゲーム機からの音声をミックスしてプレイする方法です。
しかし、その場合PCを接続しないのだから、そもそも「Speaker」をHDMIにミックスする必要性はないはずです。
あまりに謎なナニコレ機能。
配信で役に立ちそうなHDMIセレクターという機能を殺して初めてまともに使えるようになるため、需要に対する供給としてあまりに不親切だなぁというのが感想です。
一つ、「Speaker」をWindowsの既定値とせず、別のUSBDACをモニターに使用することで解決できるという方法も思いつきましたが、Windowsは複数のオーディオインターフェイス接続に対応していません。不具合の元となるため、これを解決できるのはMacユーザーくらいでしょうか。
それ以外の機能については親切だと思います。AG03よりも直感的に設定しやすい点はグッドです。
アナログミキシングからデジタルミキシングに要所が変更されているため、音声収録面ではノイズの減少も見込めます。触れませんでしたが、マイクに対してかけることができるEQ・コンプ・リミッター等のDSPエフェクトは機能性として抜群です。
AG03は声だけでなく楽器も含めたマルチなミキサー型オーディオインターフェイスとして人気です。そこから声に特化しつつ配信向けの機能を取り込むことでより使い勝手のいい配信向けオーディオインターフェイスになっているかと思いきや、配信に係る部分がおざなりになっており、使い勝手の悪さが目立つだけでなく、自爆している。
この記事を見て購入を検討するのであれば、そもそもOBS等を通さない配信者であれば良いんじゃないかと思います。
Youtube・Twitch等のストリーミングアプリを前提とした配信をするのであれば、厄介な代物ですので、おすすめしません。もっと簡便なデバイスを検討したほうがいいでしょう。
最終的に、HDMIセレクターを使わない機器接続で設定をしたため、買い替えた意味あったか…?となってしまいました。これについては買え~買え~と言った自分にも非があるため4万出させて申し訳ねぇ~というオチです。
Streaming Output Mixerの使い勝手を向上させるようなアップデートが来ることを期待しつつ、でも2022年6月に発売されてから1年半以上この点が放置されているのだから解決は見込めないだろうなーとYAMAHAに失望しつつ、ZG01のレビューとします。