Live Report Spotify O-East / SQUAREPUSHER Japan Tour 10月27日

一昨日、SQUAREPUSHERのLiveを見に行ったので感想をダラダラと。

ビートインクやエレキングのライブレポート記事読んでたら書きたくなっちゃったので。

 

 

2020年1月、SQUAREPUSHERの『Be Up A Hello』が発売され、同時に新木場スタジオコーストでの来日公演(2020年4月3日)が発表。

 

2015年、『Damogen Furies』のときは恵比寿ガーデンホールで公演。

2017年、ショバリーダー・ワンでの『Elektrac』のときはO-eastで公演。(しかも前座がにせんねんもんだい

どちらも見に行きたいと思いつつ、当時未成年の自分は大きいライブハウスに行く勇気が出ず、お金もなく行けず仕舞い。

今回こそは社会人だし、金もあるし行こうとチケット最速販売で購入。4月の公演を待っているところに突如、2020年3月『Lamental EP』が発売。

なんて興奮させてくれるんだ!いよいよトムのプレイを現場で見れると待ちわびていました。

 

そして4月。コロナウイルスの蔓延により渡航の禁止等が発令され、ライブは延期に。

『Be Up A Hello』の新曲は、世界のどこでも公演されることなく過ぎていってしまい、コロナ禍で流れる日々。その間に新木場スタジオコーストの閉館、振替公演が決まるも再延期となり、いつまでもチケットだけが自分の手元に。

そんな中で、Warpから1stアルバム『Feed Me Weird Things』の再発。

Rephlexから発売されたためにプレミア化までは行ってないものの、新品では買えなかった本作が再発。SONYの日本盤のみ収録されていたボーナストラックも、Warp盤ではしっかり収録され、世界のファンは日本盤を入手する必要がなくなったことでしょう。

 

『Be Up A Hello』と『Feed Me Weird Things』を踏まえて、帰ってくるトムがどんなライブをしてくれるのか、期待も高まりつつ、コロナ禍を呆然と過ごしていました。

 

そして昨年の10月、SQUAREPUSHERはUKツアーでライブに戻ってきました。

 

彼の機材が気になって仕方ないフリーク達は「なんだこのベースは」となったでしょう。

彼の6弦ZOOTベースはしばらくライブで使っていませんでした。代わりにIbanez SRやMusic Man Bongoが使用されていたため、久々に見るZOOTベースに、ポジションインレイが追加され、コントロールも変わり、何が変わり、何をしてくれるのか期待が高まります。

 

 

公式や、盗撮が徐々にSQUAREPUSHERのライブ映像を出し、『Be Up A Hello』の新曲を演らず、『Feed Me Weird Things』を踏まえた90年代に回帰したライブをすることもなく、完全に未発表の新曲を持ち出し、またスタイルを一新してやってくることが伝わり、困惑と期待が徐々に湧いてきました。

 

そして8月、Japan Tourの概要が発表されチケットの更新申請メールが届き、2年半越しにチケットが使えることに。

前座DJにライゾマティクスの真鍋大度と緊急来日でハドソン・モホーク。

当初予定されていた新木場から渋谷に変わり、(個人的に渋谷が嫌いで行くのが億劫になりつつも、)返金ではなく更新申請をして当日を迎えました。

ハドソン・モホークは聴いたことなかったので予習で『Cry Sugar』だけ聴いて行きました。

 

 

 

 

 

一緒に行く友達なんているわけもなく、一人でふらっと開場時間の18時を少しだけ過ぎて到着し、O-Eastの前にはすでに長蛇の列。

どこから入ったら良いものかと張り紙を見ると、チケット番号で列が違うとか。しかし2年半前にチケットを買った人達はどこに並ぶのかと疑問のまま歩いていたら、更新時に認証画像を受け取った人はもう入っていい様子。

人の列を横目にファストパスでアトラクション入るみたいだなーと思いながら入場。中には十数人しかおらず、喫煙所で一服済ませてから、じゃあ最前で見ようと柵にもたれて、DJテーブルの奥にある仰々しい照明の要塞を眺めていたところ、会場アナウンスもなくふらっと現れる真鍋大度氏。

いきなり始まるブレイクビーツに、あれ全然人いないけど…?もう始まったんか???と困惑するも、ウーファーから来る低音が身体を揺らし、アーメンブレイクには勝てず、聞き入ってしまう。

リズムで繋いだかと思えば、上モノの繋ぎでリズムが変わる。ブレイクビーツアンビエント両方の要素を使い分けつつ、会場のスピーカーを慣らしていく。

冷静にDJミキサーに向かい構築していくビートに、上手いなぁ~と。

ある程度時間が過ぎ、ハドソン・モホークが登場。『...I Care Because You Do』のジャケっぽい、けど別にリチャードではない赤いトレーナーを来たハドソンは、職人芸のような真鍋から変わり、一気にPOPだけど堅実かつ素直な繋ぎ方でプレイ。

「Intentions」で完全にハドソンの空気に。シンプルな4つ打ちからブレイクまで緩急変化をみせていき、「Stump」で一変。ウーファーから来る低音のなかで波が打寄せる。

そして終盤、「Bicstan」303ベースサウンドと高揚していくリズムで場を完全に手中に収めたハドソン。予習に聴いて、一番自分の中でヒットしたのが「Bicstan」だったため、わかった瞬間に叫んでしまった。

レイブのサウンド・空気ってこういうことかと、ホームオーディオでは絶対にわからない箱ならではの電子音楽に撃たれつつ、舞台転換を見ながら、トムはまだかまだかと興奮。

 

会場BGMが消え、暗くなった会場スクリーンに映し出された「Terminal Slam」。

 

ハチ公口から会場まで見てきた渋谷が、ジャックされていく。何度も見たMVながらも、ニヤつきが止まらない。

SQUAREPUSHERにジャックされた渋谷を背景にトムが登場。

「こんばんわー!」と叫び、客も返す「こんばんわー!」

一気に和やかな空気になったかと思えば、例のZOOTベースを持ち、やはり既存楽曲ではなく、未発表新曲が次々と演奏される。

最前に居たからこそ、照明が目の前で焚かれ、身体を低音で揺らされ、耳はどこを聴いていいのかわからず、もはやトリップの域で力が抜けていく。

ジャングルビートのシーケンスがノンストップで続き、どこを演奏しているかわからないベースを弾くトムに圧倒される。

休憩させることなく続くサウンドに、隙あらば手を挙げ煽るトム。

右手が角度的に見えなかったものの、左手の動きでエレピのサウンドをベースで弾いていることが分かり、このライブでベースらしいベース音で6弦を鳴らすことがないのだろうと察する。

 

サウンドが落ち着き、ドラムだけになったかと思えば、そのドラムはベースをトリガーにしている。あまりにスムーズな進行転換に気づいたときには、ゾッとした。

タッピングで鳴らす。指引きで鳴らす。サムピングで鳴らす。変幻自在にドラムがブレイクしていく。

足元のエクスプレッション・ペダル次々踏むと、楽器が増えていく。ベースによるドラムサウンドソロが、事実としてベースソロではあるものの、全パートベースによる曲に変化していく。(背景が!のノイズだったのがなかなかユーモラス)

聴き馴染みのあるフレーズ(Anstromm-Feck4)も交えたソロが終わり、ベースを下ろす。

 

そしてシステムに向かい始まるノンストップの電子音。時折ヘッドフォンで確認をしながらビートは加速し、変化と展開を辞めることなく続いていく。

『Be Up A Hello』のダウンロードコンテンツとして発表された「Squarepusher NTS Mix 22-06-09」のようなサウンドの暴力が強烈に来る。そして真鍋氏によりコントロールされた背景映像がよりトランスさせる。

激しいノイズ映像と要塞照明に目をやられ、その間にいるトムが原色のノイズの中に消えるように見える。ここまで狙った演出だとしたら…と考えると、2階席に行かずに正解だったなと思う。機材や手元が見れなかったのは少し残念だけど。

 

完全に飲まれた。僅かな隙間も許されないサウンドの暴力の中に語彙も失って頭を揺らすことしかできなくなっていた。

 

そして終盤。再度ベースを背負い、美しいオルガンのようなシンセサウンドで静かに始まったのは「Oberlove」。ベースでどこかのサウンドを弾いているが、最初は何の曲かもわからなかった。徐々にメロディーの輪郭を現し、アルバムに収録されているイントロに繋がる。

『Be Up A Hello』を最初に聴いたときのことを思い出す。『Damogen Furies』は怒りをオリジナルソフトウェアによるテクノロジーだけで昇華させたようなアルバムだったのに対し、『Be Up A Hello』は90年代の機材を掘り返し、暖かく懐かしむようなメロディーとサウンドにうるっとした。その1曲目こそ「Oberlove」だった。

やっと演奏された周知の曲に、安堵が漏れる。静かに消えゆくサウンドに涙ぐむ。しかしながらも複雑なリズムに鼓動が同期する。

トムを見たら、ベースでメインのメロディーの上モノを弾いていた。弾くのそっちだったかぁ~とニヤついた。

 

続けて「Nervelevers」。うねるリングモジュレーターに安心してSQUAREPUSHERらしさを感じる。シーケンスが徐々に止まりベースだけで全パートを弾くトムを見て、誰もこの演奏家には敵わないと思った。

 

ステージを降り、コールが飛ぶ。数分してアンコールに答える。一瞬だけ再生し、ニヤつくトム。客の誰もがその曲に気づき湧いた。「Come On My Selector」。

彼のキャリアの中でトップヒットとも言える曲だけに、ようやくベースらしいベースを弾くかと思えば、やはり進化させてくる。2オクターブ上くらいのシンセサウンドが混ざったベースが刺さる。

「I'm the fucking daddy!」ブレイク時に再生が途切れ途切れになりピッチが合わなくなる。トラブルにも冷静に合わせる。ベースで補完し、シーケンスを巻き戻し、あたかもそういう展開のように振る舞い、完璧に魅せた。

そしてベースを何度も叩き、フィードバックのように発生させたノイズの中、ステージは幕を閉じた。

 

 

Squarepusherの聴衆は彼の様々な側面の、電子音楽で惹かれた、ベーシストとして惹かれた、どれかに惹かれて聴きに行くために、満場一致で良しとはされないと思う。

少しでもベースらしいプレイを見たかったと思いつつも、圧倒されたステージに、また来日公演があったら躊躇せず行こうと心に決めた。2年半待ちは勘弁してほしいが。

 

野暮だとわかりつつ書くが、彼のライブに「踊る人間が少ない」と愚痴る人が多かった。私はどちらかといえば演奏者としての彼に惹かれたために、プレイを見たい!と踊りはしなかった。

公演後にタバコを吸いに喫煙所に行くと、前の方が地蔵でつまらねぇと愚痴る人がいた。わざわざここで言うなよと思いつつ、好きに聴かせろと苛立った。

そもそも彼をろくに知らずして来てる客も多いとも思った。自分の横にいた人は最初から最後までスマホでステージを撮影しており、いいのかなぁと疑問に感じる。音楽イベントである以上そういった層が一定数いるのもわからなくはない。客で害され、多少もやつく。少なくとも会場方針としてのマスク着用くらいはしてほしいものだが、そう上手くはいかない。こればかりは個人個人の言動や行動が多少なりとも改善されることを願う。